ブラックフォーマルのコートがなくて

何年か前のある冬の寒い日の葬儀への参列の時、その葬儀には、会社での役職の父の方がなくなられたのか、とにかく大勢の方が参列されました。

私は、その方とは縁が遠かったので、遠慮して外での参列となってしまいました。

まさか一時間も外で参列するとは思ってもいませんでしたし、当時、私にとって、初めての葬儀参列でした。

周りをよく見ると、温かそうなカシミアのブラックのロングコートを皆さん着用されているではありませんか。

私というと、春秋冬兼用の上下のスカートでのブラックフォーマルスーツを着ていました。

バッグもちゃんとしたものを持っていきました。

参考:ブラックフォーマル レディース バッグ

葬儀が始まると身動きできず、じっとしていなければなりません。

初めのうちは、そんなに寒さを感じませんでしたが、そのうち、足元から冷えてきて、でもじっと突っ立っていなければならず、周りのコート着用の人が羨ましく、リッチに見えました。

何しろ当時カシミアのコートと言えばウン十万円すると思っていました。

私はそんなコートを買う金銭的余裕がありませんでしたし、かといって、ブラックフォーマルコートなんてそれ以外は考えられませんでした。

みなさんオールカシミアブラックフォーマルコートなのです。

その時、葬儀の事は頭から吹っ飛んで、ひたすら自分の持っているコートを頭の中に描いていましたが、「手持ちのコートでこの葬儀に着て行くに該当するコートはないな~」と、考えていました。

人様とのお付き合いに欠かせない大切な洋服の一つであり、ないと肩身の狭い思いをしなければならない必需品の一つであると思いました。

それから、お店に立ち寄る機会があると、ブラックのカシミアコートを物色していました。

でも、値段が高くてなかなか手に入ることができませんでした。

子供たちにも学費が必要でなくなったある時期、ついにこのコートを購入することが出来ました。

着用してみると、ロングだけど、あったかくて軽く、さわり心地が滑らかで、デザインも流行に振り回されないものを選びました。

なんかリッチな気分になりました。

しかし、葬儀はそうたびたびありませんし、私のお付き合いもそう沢山ありませんでしたのでなかなか着用の機会は訪れませんでした。

洋服ダンスの中で虫に食われないよう丁寧に扱いましたが、さて今まで何度着用したかと思うと10回にも及びません。

今にして思うと、値段の割には、利用する機会がありませんでした。

葬儀での着用は、たった一度のような気がします。

そのほかでの着用はなんだか、もったいなくて、しかもこのコートを着ていくような上品な場所にはいく機会がありませんでした。

汚れてもいいとは思っていないので、しかもこれが汚れるとクリーニング代が相当するぞと思うと余計着用に二の足を踏んでしまいます。

夫婦で出かけようと思うと私だけがブラックのロングコートで、夫はそうではないとなんか気の毒のような気がして、自分ひとりだけでの出かける機会にしか着用する気になれませんでした。

そのうち、夫のも購入しないと申し訳なく思い、と、ある毛皮店見学込みバスツアーにて、夫のコートも買ってしまいました。

ウン十万しましたが後で、違う店で値段をみると、ずいぶん安く売っていたので、がっくりして損な気分になりました。

このコートを、二人とも着て、夫の誕生日に旅行に出かけました。

冬の寒いクリスマスの日が夫の誕生日なのです。

四国一周の旅の途中で、クリスマスイルミネーションのある丘の上まで来て、二人のツーショットをカメラにおさめましたがその写真はどこかへ行ってしまいました。

が、私の心のアルバムにはしっかりおさまっています。

このコートを着て新幹線に乗ったことが、今ではいい思い出になっています。

ちょっと長めのコートですが、私たち夫婦にとって一番贅沢な買い物であったと思っています。

今も、洋服ダンスにかかっていますが相変わらず、着用の機会がありません。

これから、普段にも冬の寒い日には着用したいと思っていますが、なにしろ、車での移動が多いので、洋服ダンスの隅っこに眠っている事でしょう。

息子たち嫁たちへの遺品となるかなとさみしい気持ちがこみ上げてくる年頃となりました。

ブラックフォーマルスーツは、人様とのお付き合いをするにあたって、必ず必要な洋服ではあります。

だけれど、人間の身体は体形が長い年月の間、変わってしまって、いくら着心地や材質が良くても、身体に合わなくなってしまいます。

何度も購入しています。

しかも夏冬と別々に用意しないと夏に冬用は絶対着れません。

夏専用でも、暑いです。

しかし、最近はセレモニーホールなので、出かけるときは、半そで着用で、ホールに入ると、クーラーが効いているので、長袖でもいいけれど、私は面倒なので9月の終わりでも、半そでで行きましたら、皆さん長袖の方が多かったです。

最近グレーの軽い感じのスーツを法事に着用してみましたが意外とハイカラな感じで明るくて、古臭い感じもなく、おしゃれ感覚を味わいました。